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30年×ICUHS生=∞(無限大)! ICUHS元校長 桑ヶ谷森男(くわがやもりお)さん

vol.02 後編 人生の価値とは、何かを成し遂げたよりもどのように生きていくか。卒業生へのメッセージ。

石川(生徒) ICUのいいところをいっぱい話していただいたんですけど、逆に「こうしたほうがいいかも」という改善点とかあったりしますか?

桑ヶ谷 僕は、学生は基本的に言うと勉強してもらいたいと思っているのよね。スポーツでも文化的なことでも、いろんなactivityをするけど、同時にやっぱり、基本的な学問に対して真剣になってもらいたいということがありますね。だから、授業中にだらだら机に顔を伏せるような生徒の姿は見たくない。もし満足できなかったら、先生に対してちゃんと、自分が授業に出る時間が無駄にならないように、きちんと意見を言うべきだし、そういう点では、学校の授業は真剣な厳しさもあっていいと思うんですね。楽しく、笑いがあったりユーモアがあったりと、そういうクラスはもちろんいいんです。それがなきゃいけないんだけど、同時に、毎日学ぶことの喜びがないといけないと思うんですね。それがもしICU高校に欠けているようならまずいなと。これから、もしそういうことがあった場合は直してもらいたいと思います。

− 今度は逆に、桑ヶ谷先生から質問などはありますか?

桑ヶ谷 レベル別のクラスというシステムがあって、他の学校だったら差別だとかって騒ぐけど、ICU高校の場合は生徒それぞれの背景が違うんだから当然だという風にスタートしています。そういう理解は、帰国生徒にあるのかな?

篠原(生徒) ありますね。私の周りの人はどのレベルであっても自分のレベルに誇りを持っていると思いますし、私自身も授業がすごく好きです。

石川(生徒) 私も、レベル別授業だと、すごく勉強する気が起きるんですね。帰国生だったので、日本の中学では勉強してないわけで、数学とか国語とかひどかったんですけど、逆に最下位のレベルに入ったことで、このままじゃいけないと思って。それがきっかけで、1年と2年の時はすごく勉強して、何とかレベルを上げることに成功し、うれしいという喜びを感じました。

桑ヶ谷 レベル別授業以外に、Brother and Sister Systemというのを最初の頃に提案したのよ。一般生が得意なところは帰国生に教えて、帰国生が得意なところは一般生に教える。そういう形の、生徒がお互い教え合うシステム。だけど、「それはちょっと大変だね」ということで……。

篠原(生徒) 本校に来た時に、印象として、すべての授業においてBrother and Sister Systemが自然にできてるんじゃないかなと、私はすごく感じました。朝のホームルームの前とか、みんな誰かに質問したり。英語や国語のみならず、数学とか世界史とかも、生徒たちが一緒に授業以外で教え合うという精神は、すごくこの学校は強いと、私は思ったんですけど。

桑ヶ谷 うれしいね。そういうことはすごく大切だよね。制度として形になってなくても、気持ち、魂が入っているほうがいいんだから。それは1つの学校文化ですね。一般生は一般生、帰国生は帰国生、それぞれ勝手に伸びるだけじゃなくて、お互いに相手の存在というものが自分にとって大切な存在だと思えるような、そういう感じの学校が理想ですね。

篠原(生徒) これから卒業する私たちとか、今まで卒業した人たちに、これからも大切にしていって欲しいものとか、メッセージをお願いします。

桑ヶ谷 2009年の3月にICU高校卒業式で渡された卒業証書の最後の番号が、7,099。それだけの人が巣立ち、それぞれの道を歩んでいる。スポットライトを浴びている人もいるし、そうでなくても皆さんそれぞれ立派な仕事をして素晴らしいと思う。世間で有名になるかどうかは別として、自分で本当にやりたいものというか、創造的にクリエイティブに何か自分でやれるという、生きがいのあるものを見つけてもらいたい。それが1つですね。
もう1つは、感動する人間になってもらいたんだよね。無感動じゃ困る。やっぱり感動できる感受性を持った人間になってほしいなと思います。
あと、それこそ何を成したかという成果も大切だけれども、本当は、どう生きるかということが大切。だって、お母さんで、そんなに仕事の上で有名にならなくても、子育てに一生懸命だとか、今のこういう時代だったら、必ずしもいい就職できなくても、何か一つのことをやり続けている方、いるじゃないですか。その人が自分自身の置かれた状況の中で、現実と向かい合って、どう明るく、周りの人に対して喜びを与えるような生き方をしていくか。
どのように生きていくかということは、何を成し遂げたかにも増して価値ある人生だと思います。

篠原(生徒) ありがとうございます。

桑ヶ谷 じゃあ、みんなは将来をどういう風に考えています?

石川(生徒) 私は、このままICU大学に内部進学で入学できたらいいなと思っていまして、国際的なことに興味があるので、国際関係をメジャーとして取って、知識を深めていこうかなと思っています。

篠原(生徒) 私も同じく、ICU大学のほうに進ませていただければと思っているんですけれども。比較教育とか平和研究、平和構築とか平和定着活動と教育をどう一緒に結びつけられるかに興味があります。いろんな方法からアプローチがあって、どの道から行こうかなというのはまだ決まっていないんですけれども……。

桑ヶ谷 2人が今おっしゃったことは、ICUに合いますよね。ICUの大学の中身にふさわしく、満足できるようなものが大学にあると思います。僕はうれしいです、自分の出た大学に行ってくれるというのは。ICU高校から入った子が大学も良くしていくという、それを期待したいですね。

− 在校生と卒業生が、お互いパワーをもらえるというような関係を作っていければと思います。今日は本当にありがとうございました。

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Profile 桑ヶ谷 森男(くわがや もりお) ICU高校元校長

桑ヶ谷 森男さん

1935年生まれ。1957年ICU大学を1期生として卒業。1978年ICU高校創立時から14年間教頭、1992年から2002年まで校長を歴任。退職後、2002年から海外子女教育振興財団の教育相談員として出国・帰国する生徒の学校選択を支援している。また、ICU高校卒業生父母の会(にこおん会)の会長を務め、高校のクラブ活動支援や文化講演会の開催など、ICU高校の学校活動を様々な形で後援している。

 

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