ICUHS Global Learning Programs

1月23日(金)、3年生対象の特別授業「産育休を振りかえって」が開講されました。
スピーカーは、昨年4月に産育休(産前産後休業・育児休業)から復帰された英語科の神谷教諭です。

「産育休」と聞いて、一見、「高校生にとっては難しすぎるテーマなのでは?」、「あまり身近でなく、ピンと来ないテーマなのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今の3年生たちが社会に出て活躍する頃には、「子どもを育てながら働く」という選択肢が今よりもますます当たり前になっているでしょうし、それが実現できる社会になってなければなりません。
今後ますます多様な生き方や働き方が求められるようになっていくことを考えると、誰にとってもとても大切なテーマですし、「多文化共生」を考える上で欠かせないテーマであると捉えています。


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約1年半の産育休を取得後、職場に復帰され、お子さんを保育園に預けながらフルタイムで活躍中の神谷教諭。
妊娠中から職場復帰後に至るまで、生徒に分かりやすい言葉で、ご自身の体験や感情を素直に、そして正直に話してくださいました。

例えば・・・
妊娠発覚時に抱いた不思議な感情と、約2か月続いた辛い悪阻(つわり)の時期のこと。
産院選びの苦労。
立ち会い出産時のエピソード。
出産後に味わった「季節が変わった、別世界」という感覚。
休業期間中の活躍ぶり。
産後の身体的・精神的変化。


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また、神谷教諭が経験したこれら個人のエピソードから、社会問題やこれからの課題としての出産・育児へと話は展開し、私たちが理解し、考えなければならないことについて学びました。

まず、保育園不足の問題。
3回申し込みをしたものの、全てについて不承諾通知が届いた現実。また補欠順位が200人中100番目であることに唖然としたとの体験談がありました。

次に、産院不足の問題。
居住する市内に産婦人科が1軒しかない事実に驚いたお話。

他に、ひとり親家庭の孤立や児童虐待、労働人口の減少(出産後、仕事を諦め退職する女性も)等の話題が挙がりました。
解決への提言として、男性の育児休業の義務化(産後1か月は必須に、夫婦合わせて2年間取得など)、ワークシェアリング(オランダ・ドイツなど)やパパクオータ制度(ノルウェーなど)の導入、保育施設の拡大と充実、病児保育の充実、一時保育サービスの利用要件の緩和などについて話がありました。

子育ては絶対に思い通りにいかないが、子どもから学ぶことも多く、自分の価値観が変わる、過去最大の「異文化体験である」と話していた神谷教諭。
困っている時は助けを求めることをためらわない「お互いさま」精神をもつこと、弱者の視点を持ち、困っている人を見かけたら声をかけること、といった先生の言葉には、出産と育児に限らない、多文化共生へのメッセージが込められていたような気がしました。