ICUHS Global Learning Programs

2016年夏、ICU高校では国内外で様々なスタディーツアーが開催されました。昨年に続きたくさんの生徒が関心を示し、参加してくれました。
このブログを通じていくつかのスタディーツアープログラムを紹介していきたいと思います。
今回ご紹介するのはベトナムのスタディーツアーです。2016年7月22日~29日に開催され、20名の生徒が参加しました。

主なプログラムは、

①ストリートチルドレンの救済のための施設の訪問、交流、ボランティアワーク
②ベトナムの高校生との交流プログラムを体験
③ベトナムの少数民族を訪問   
④世界遺産や戦争博物館の見学等  

です。
今年度の新たな取り組みとして、ベトナムの人力車"シクロ"に乗ったり、クチトンネルも初めて訪問し現地の人々の生活やベトナム戦争の歴史をさらに知ることができました。

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下記はベトナム孤児のために開設された「子どもの家」を訪問したときの写真です。
「子どもの家」はストリートチルドレンを自立支援させるための施設です。元小学校教師の小山道夫さんが設立し、ストリートチルドレン救済や貧しい学生に奨学金を与える活動などを20年以上にわたり行ってきました。様々な背景をもつ子どもたちに衣食住を与えるだけではなく、将来子ども達が自立をできるよう日本語学校、日本料理店運営などを行っています。勉強が好きな子どもには大学進学から卒業までお世話をしたり、勉強が好きではない子どもには手に職をつけることができるよう職業訓練センターを設立し支援もしています。
今回のスタディーツアーでは前回同様、施設の子どもたちと一緒に文化交流をしたり、ボランティア活動などをしました。
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その他ツアーの写真です。
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帰国後、生徒に書いてもらったレポートの一部をご紹介します。


・少数民族の村に行って一番考えさせられたのは、生活の質の判断基準だ。村に行って最初に受けた印象は、村の子供たちがとても生き生きとしていたことだ。バスが到着すると、子供たちは爛々とした表情で群がってきて、中には支援物資を運ぶのを手伝ってくれる子供もいた。歓迎会の後は子供たちと遊んだ。単純な追っかけっこだが、みんな汗だくになりながらすごく楽しんでいた。何故単純な追っかけっこでここまで楽しめるのか。変な言い方だが、この子供たちは携帯やネットに毒されていないのが一つの原因だと私は思った。今の日本の子供はテレビや携帯、ネットばかり見ていて表情がない。友達と遊ぶ時も、そういうネットやテレビを用いてでないと遊ぶことができない。でもこの村の子供たちは、限られたものでどうやって遊ぶかを工夫している。携帯やテレビがないと友達付き合いができない、ということもない。物質的に見たら確かにカトゥー族の方が劣って、日本の子供のほうが豊かかもしれない。しかし精神的に見たら、実体のない仮想現実の世界で遊んでいる日本の子供よりも、自分の体を使って、腹の底から笑って遊んでいるカトゥー族の子供の方が、よっぽど豊かであると私は感じた。

・この旅で強く考えさせられた事があります。それは、コミュニケーションのとり方です。今回交流した人々とは話す言語が違いました。それでも、今回の旅ではとても楽しんで人々と交流することができました。今回人々とコミュニケーションをとる時、僕は一人一人の目を見て、表情やジェスチャーなどをたくさん使いました。そうすることで、言葉が通じなくてもお互い何を伝えようとしているかわかりました。そのうえ、きちんとお互いの事を見ながらコミュニケーションをとっているので、親近感もわきました。僕はこういう風に言語が通じる人とコミュニケーションとれていないと感じました。これからはどんな人に対しても、表情などをたくさんつけてコミュニケーションをとっていきたいと思うようになりました。

・今回ベトナム戦争を学ぶために行った施設は、クチトンネルと戦争証跡博物館の二つだ。クチトンネルに実際に入ってみると、しゃがまないと移動することができない。長時間いたら気が狂いそうになる。これでも観光用に穴を広げたものなので、実際のトンネルはどんなに狭いのだろうかと思った。ベトコンはトンネルに様々な工夫をしていた。戦いにおいてもベトコンは様々な工夫をしていた。米軍の不発弾を利用して地雷を作り、米軍の壊れた戦車から部品を取って自分たちの兵器に利用したりなどした。特に落とし穴の工夫はすごかった。落ちたら竹やりが何重にも突き刺さる落とし穴など、何種類も落とし穴があった。一つの落とし穴を作るだけでも大変な労力であるのに、ここまで様々な仕掛けを作っている。ゲリラ戦の必死さが伝わってきた。クチトンネルで気になったのは射撃場とサバイバルゲームの施設があったことだ。しかも射撃場の銃はベトナム戦争でも使われていたモデルのもの。戦争の悲惨さを伝えるはずの場所で、人の命を弄ぶ娯楽施設があるのはおかしい。結局ここは単なる観光地になっていた。私は実際に人が銃を撃つところを初めて見たが、一発銃弾が撃たれるたびに、これで人が死ぬのかと思い、気持ちが悪かった。次に行った戦争証跡博物館は、ホーチミン市にあるベトナム戦争史の博物館だ。ベトナム戦争の報道写真や兵器の実物が展示してある。建物の外では兵器が一般的な航空博物館のように展示してあり、あまり思うことがなかったが、建物の中はそうではなかった。車にひきずり殺された女性、体がバラバラになった男性、爆撃によってえぐられた地面、焼けただれた男性、泣きじゃくる子供たち、撃ち殺される女性子供。容赦なく残酷な写真が展示されていた。特に印象的だったのは拘束されているベトナム人女性と子供の写真だ。「彼らをこれからアメリカ兵が撃ち殺そうとしているので、その前に一旦アメリカ兵に拘束させて撮った。撮り終えた後、その場を立ち去ったが、その後銃声が聞こえ、視界の端で女性子供が倒れていくのが見えた。しかし私は振り返らずに歩き続けた。」と解説文に撮影者の言葉が書いてあった。その時気づいたのは、ここにある写真に写っている人々が、ほとんどもう戦争で死んだ人々であることだ。少し考えればわかることだが、私はそのことを初めて強く実感して少し怖くなった。こうして写真で見てみるだけだと、戦争というものが過去のものだとされがちだ。しかし戦争は今でも起こっている。中東ではアメリカ軍がベトナム戦争と似た手段で戦争を起こし、大勢の罪のない人々を虐殺している。この写真と同じことが今でも繰り返されている。そしてそれは日本と無関係ではない。ベトナム戦争では沖縄はアメリカの占領下にあり、日本は兵器の生産などをして特需が起き、戦争で日本は豊かになった。さらに今度中東では、集団的自衛権を用いてアメリカの虐殺に加担しようとしている。戦争は決して過去形などではない。私の生活と強く結びついている。それを改めて実感した。

・このツアーでは、ベトナム人とはもちろん、同じ学校に通いながらも話したことがなかった友達との出会いにも恵まれ、自己発見が多々ある旅だった。今回学んだ「心の繋がり」はICU高校の「多文化共生」の価値観にも欠かせないものである。違う国で様々な文化に触れてきた友人とそれぞれの経験や考え方を分かち合い、相互理解を達成するためには、心を相手に向けることが一番大切である。「教室の中が世界地図」であるICU高校だからこそ、多様な背景を持つ生徒たち、先生も含め、日々の学校生活を共有する中で、素朴な興味や疑問がぶつかり合う。他人の考え方を排斥することなく、心を開き語り合うことで異文化による想像できないような化学反応を起こすであろう。このような新しい火花が校内の至る所でもっと生まれれば、より豊かな学校生活となるだろう。ツアーが幕を閉じ、帰国した後も、ベトナムの子どもたちの笑顔や、美味しいマンゴージュースを飲みながら語り合った仲間、小山さんの貴重な体験談や、彼を影響したベトナム戦争でベトナム人が知恵を発揮し戦い歩んだ歴史、忘れられない光景が次々と脳裏に浮かんでくる。このツアーで、ベトナムの食や文化、人々の心の豊かさに気付かされ、印象がガラッと変わった。行ったことのない場所に何が待っているかは、自分の身と心を持ち直に感じ取らないと、数え切れないほどの素晴らしい出会いを逃してしまう。この地球上のもっと多くの場所に足を踏み入れ、それぞれの文化に身を持って触れ、人々と心を持って接し、自分の宝物、そして自分の「道」を見つけたい。
ベトナムの9日間、世界と未来に向け、大きな扉が開けた気がした。

・言葉が通じなかったり、住む環境が全く違ったり、世界は様々な文化や考え方を持った人々で溢れています。私たちはそれぞれに個々の色を持っていると思います。私はアメリカに越してきたばかりの頃言葉が通じなかったのは勿論、アメリカ人の行動や考え方がとても自分勝手に思えたことがありました。今までうまく溶け込めていた自分の色がいきなり相手に受け入れてもらえなくなった気がして異文化の中で生活することの大変さや辛さを身をもって感じました。そのため私の中では異文化共存は難しく言葉の壁は高いものだという概念がなかなか消えませんでした。しかし言葉が通じないとわかっていても私たちに楽器の吹き方や踊りを一生懸命教えてくれるベトナムの少数民族の人たちをみて私はひどく心を打たれると同時に気付いたら彼らと仲良くなっている自分にとても驚きました。自分の色と相手の色がたとえ黒と白のように真逆であったとしても私たちは心を通わせることができることを学びました。それに必要なことは笑顔と心の持ちようだと思います。どうせ言葉が通じないだ仲良くなんて無理、そう思ってしまえば、自分と彼らの距離が縮まることはないでしょう。そして笑顔。これだけは世界共通だと信じています。お互い言葉が通じなくても笑顔でいるだけで相手も自分と同じ気持ちなのだということが伝わってくるし、それだけでお互いの距離も縮まって心があたたかな気持ちになりました。

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11月28日のSGH発表会では全校生徒の前でツアーごとにスタディーツアーの発表を行ってもらいます。ツアーに行ってない生徒にも感じたこと、学んだことを是非発信してほしいと思います。