ICUHSの”C”はChristianity

1984.7.20 Letter to the Parents 19「ご父母の皆さまへ クリスチャン・ウィークをかえりみて」 校長  大内 謙一

 6月18日から23日までの一週間、クリスチャン・ウィークが催され、映画;奇跡の丘と天地創造を生徒たちに見せ、ペンテコステ礼拝をもち、また、他校の生徒を招いてキリスト教についての懇談会をいたしました。
 本校はキリスト教主義学校でありますが、キリスト教の伝道を目的とするものではありません。しかし、私たちはキリスト教信仰が人間の立って進むべき道について深い示唆を与えるものと堅く信じ、生徒たちには週一回のキリスト教概論の授業を与え,折りにふれてはキリスト教を理解させる多くの機会を与えております。その教育方針の一環としてクリスチャン・ウィークがあります。
 本校では、できるだけ宗教色の濃くないキリスト教を打ち出しています。学問的には宗教の定義は大変むずかしいのです。原始的なものから国民的宗教・世界的宗教などがあって、複雑多様であるからであります。しかし、どの宗教にも神秘性は共通であります。生徒たちは、イエス・キリストがらい病人をいやした場面を映画で見て、不思議さに目を見はると同時に疑いさえも感じたことでしょう。ご家庭でも、そのような感想を話した生徒もいたことと思います。どんな名優が演じても、キリストの人間像を描写することはできません。なぜならば、イエス・キリストという人間のなかに神性があるからであります。このこと自体は、神が私たちに啓示した秘義であり、愚者といわれながらも、私たちは、このことを信じています。したがって、キリストの奇跡は信ずる者にとっては益となり、信じない者には無益どころか、かえって、つまずきとなります。
 キリスト教以前にユダヤ教という宗教がありました。旧約聖書のなかにヘブル語のツァーラハトという病名がありましたが、これが、らい者と誤訳された疑いがあります。それはともかくとして、実際には、悪性の皮膚病のため顔面のくずれた人がおりました。その人たちは不浄な者とされユダヤ教の儀式に加わることができず、社会から閉め出されて国境近くに追いやられた人もおりました。
 ところが、イエスは、このような人に手を伸ばして、さわり「きよくなれ」と言われました。十二年間、長血(ながち)をわずらっていた女性に「娘よ。しっかりしなさい」と呼びかけました。イエスは、このほかユダヤ教によって軽蔑され、排除されていた遊女や取税人に、深いいつくしみの心をもって接し、なぐさめ、はげまし、神の国の到来を告げたのでした。このことがユダヤ教の律法を破る行為となったのです。ユダヤ教はローマ帝国と手を結んで、イエスを十字架にかけ処刑しました。しかし、イエスを超越的救済者と信ずる多くのユダヤ人もおりました。こうして、キリスト教が生れました。
 キリストが、らい病人をきよめた行為は、私たちに、こう語りかけているのです。「寄るべない人々、恵まれない人々を探せ。社会の偏見のゆえに苦しんでいる人々を求めよ。彼らが自分の足で立つように力を与えよ。」 本校の教育の主眼点がここにあります。

 

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