「進路を考えるに当たって」
多すぎる選択肢に積極的に向き合う
大学や短大、専門学校への進学の準備は、社会とどのようにかかわりながら人生を生きていくのか、進路選択は、その最初の「選択のとき」、ひとりひとりのアイデンティティづくりの大切なステップです。
「自分に向いている、向いていない」「自分にできる、できない」「楽しい、楽しくない」。過去の自分、現在の自分と対話しながら、未来の自分を形作っていく作業です。
ICU高校生と長年つきあってきて感じるのは、「選択肢が多すぎるのも大変だなあ」、ということです。語学力ひとつをとっても、国際機関で平和のために貢献したり、国際ビジネスで活躍したり、学問の世界で研究に打ち込む・・、そんな可能性を秘めている人が多くおり、またそれを実現しつつある若い先輩たちが卒業生に多くいます。
私たち教員の仕事は、ひとりひとりの話しにじっくり耳を傾けながら、資料を渡したり、先輩を紹介したり、いくつかある選択肢を整理する手助けをしたり・・。ただし悩むのは当人です。
スロースタートの理由 〜高2からの本格出発〜
さまざまな海外経験やバックグラウンドを有するICU高校生にとって、日本語による学習の力が揃い、いろいろな教科の勉強のペースがつかめるのが高2の秋頃です。ICU高校生が一丸となって燃える学校祭や体育祭など秋の行事が一段したころから大学進学が気になり始めるようです。
高校生活のハイライトを充実させてほしいと願いつつ、高校生活の折り返し点でもある高2の秋に、3年生へ向けた科目選択や校内模擬試験の一斉受験などをきっかけに、次のステージへの志望とそのための課題を確認する作業が進みます。
もちろん、はじめは手さぐりです。誤った情報や噂に右往左往することのないよう、担任とのあいだでていねいな面談が行われます。それとともに「たくさんの先生と話してみてごらん」とすすめます。また、海外大学への進学を考える生徒には、外国人の教員がカレッジ・アドバイザーとして相談に乗り、Counselor ReportやRecommendation Letterを準備し、Essayの添削指導を繰り返します。
他の高校に比べて、大学進学へ向けた準備の始まりが遅い、と思う人もいるでしょう。ただし、学校生活やクラブ活動と勉強とのバランス、海外での学校生活から日本の高校のカリキュラムによる学習へのシフトなど、スロースタートには理由があるのです。この先、高2の冬からは、ICU推薦に絞る者、国公立大や私立大をめざす者、海外大学進学を志してSATやTOEFLの試験にくりかえしチャレンジする者と、進路の志望はふたたび拡散してゆきます。
「選択」と「集中」
帰国生が多く集まる高校ですから、さまざまな大学の帰国生入試や英語運用能力入試に関する情報を多く集め、できるだけ生徒諸君の役に立ちたいと願っています。また、AO(アドミッション・オフィス)入試は、帰国生だけのためのものではありません。国内中学校出身の皆さんにも積極的にチャレンジしてほしいと願っています。
とはいえ、大切なことは「ひとりひとつを選択し集中すること」。高3秋の段階でのさまざまな特別な入試に振り回されないように、じっくりと腰を据えて一般入試に向けて5教科または3教科の勉強に打ち込んでほしいのです。
特に、高校3年生という時期は、一人一人の人生の中で他のことに邪魔されずに集中して勉強に励める数少ない時期のひとつです。この時期にとことん自分の力を伸ばしてほしいのです。
当事者意識と自覚
帰国生入試や推薦入試、それにAO入試など、これらの特別な大学入試はきわめて多様化、複雑化しています。 準備しなければならない書類、海外の在籍校から取り寄せなければならない書類も大学ごと・学部ごとに異なります。また、毎年のように入試方法や手続きの変更があります。 一般入試も同じことです。ですから、大学入試はすべて、基本的には「私事」と考えてほしいのです。親まかせ・担任まかせでなく、願書の準備・受験料の払い込みなどすべて、本人の当事者意識と自覚が必要ですし、それによる皆さんひとりひとりの成長を大切にしたいと考えます。
さまざまなプログラム =“起爆剤”
秋の恒例行事、さまざまな大学に進学した先輩たちを招いて大学生活や受験勉強の工夫について聞く「卒業生を囲む会」、
翻訳や法曹、海外援助などの専門分野で活躍する先輩の話を聞く「卒業生講演会」、
大学の授業を大学生に混じって聴講する「ICU Special Lecture Series」、
国公立大学や私立大学の入試事務担当者や教員を招く「大学説明会」、
海外大学のリクルート担当者に来ていただく「カレッジ・フェア」
さまざまなプログラムはすべて自由参加。卒業生達の話を聞き、「自分はどうしたいのか?」自問自答するヒントを提供したい、それが私たちの願いです。
「納得」と「成長」
大学進学それ自体が「目標」ではないはずです。あくまでそれは、目標実現のための「手段」のはずです。大学入学後の海外留学や編入学や転入学、大学院進学、社会人入学なども視野に置いて、遠くを見つめる眼差しを持ってほしいと願っています。経済的なことについても、家族の方と話し合いをしてみてください。奨学金については、給付ではなく、貸与奨学金であれば、大学院や海外留学もぐっと手の届くところへ近づいてくることでしょう(「日本学生支援機構」のホームページ参照)。
とはいえ、目先の大学入試の負担や少ない時間でこなさなければならない課題の多さを考えると、つい「近視眼的」になってしまいがちですが、私たち教員は、「1年後の自分」だけでなく「10年後」「20年後」の自分をイメージしてみようと働きかけます。そのために高校が提供できる最高の情報リソースは、先輩である卒業生の活躍です。あなたが希望する大学ですでに学ぶ先輩方を、いくらでも個人的に紹介します。
「納得」のゆく進路を選びとってほしい、そしてまだまだ可能性を秘めたICU高校生が「成長」できる次のステージを選び取ってほしいと願っています。