Graduates' Voice

卒業生からのメッセージ

Message 03
松本 真実

松本 真実

26期
国際基督教大学教養学部
Institute of Education, University College London
株式会社プラップジャパン

海外経験ゼロの一般生とした入学した私にとって、人生で一番のカルチャーショック、価値観を大きく変えた出来事が、ICU高校に入学したことだといえます。グローバル化が叫ばれ、英語ができること、海外に行くことが重要視されているように思います。私も漠然と「海外」への憧れを抱き、「帰国生が3分の2」というユニークな環境に魅かれ、ICU高校を志望しました。

しかし、待っていたのは、「英語」も「海外経験」もすべてが「当たり前」となっている環境。入学直後は、帰国生が話している英語が全く分からず、「15年間日本に住んでいること」に劣等感さえ持ちました。しかし、それまでの考えが覆される環境の中で、「自分が生み出せる価値とは」「自分は何ができるのか」を考えた結果が、その後のキャリアにつながっています。実際に、英語はツール。「海外」も自分のいる場所を指すだけであり、重要なのは、何をするか。ICU高校は、その「何を」の部分を追求させてくれました。

多様な背景を持つ生徒と個性豊かな先生と過ごす中で、今まで知らなかった様々な「世界」を知り、視野を大きく広げることができました。ICU高校の生活は、「違って当たり前」を体現し、背景の異なる個々人が集まる豊かさを教えてくれます。英語で劣等感を持っていた私も、帰国生の友人に日本語について聞かれるなど、クラスの中ではそれぞれ得意なことを教えあっていました。個々人の経験もユニークで、9.11にニューヨークにいた生徒が当時の状況を話してくれたり、聞いたことがないアフリカの国に住んでいた生徒が現地の生活を教えてくれたりし、日常の端々で「世界」を感じました。

国際的な側面だけではなく、社会の中で見過ごされがちな問題にも目を向けさせてくれました。沖縄での修学旅行や外部講師を招いたキリスト教週間の講座など、ICU高校では様々な学びの機会があります。日々の授業でも、議論を促す形で、一般的にはタブーで政治的と避けられるようなトピックが取り上げられました。特に、倫理の授業では、議論を呼ぶトピックについてグループで調査をし、発表後にはクラスで活発な意見が交わされました。ICU高校の学びを通じて、自分が見えていない世界があること、1つの事柄も視点によって捉え方が変わることを実感しました。

そのような3年間の学び、「日本人である自分」を見つめ直した経験や「社会の声なき声に耳を傾ける」という地歴科の先生の言葉に大きな影響を受け、日本社会の中での多様性の問題や教育・メディアに興味を持つようになりました。高校卒業後は、ICUに進学。リベラルアーツカレッジとバイリンガル教育の特徴を活かし、国際関係と教育の2つの分野を専攻しました。学業の傍らでは、紛争の続くイスラエル・パレスチナの学生の交流プロジェクトや外国にルーツを持つ子どもへの学習ボランティアに関わりました。その後、大学や学外の活動での学びと経験を深めるべく、ロンドン大学の修士課程に進学し、多文化社会における教育について研究。帰国後は、日本に逃れてきた難民を支援するNGOで広報担当スタッフとして勤務しました。現在はPR会社に勤務し、コミュニケーションを通じて社会課題の解決に寄与することを目標に、様々な企業・団体の広報サポートの仕事をしています。

ICU高校を卒業して10年。入学時に目標としていたような、英語を使うことも、海外の友人とやり取りすることも日常の一部になりました。しかし、ICU高校での大きな収穫は、「日本」と「海外」という境界にとらわれない視野と行動力。大きく変動する世界において、自分の価値観と視野、行動力で判断し、進んでいくことが求められると思います。私にとって、これからの世界を歩むツールをくれたのが、多様な世界を凝縮したようなICU高校であったといえます。

(2015年)

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シンガポール人の友人と

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