Graduates' Voice

卒業生からのメッセージ

Message 11
林 磨理人

林 磨理人

23期
国際基督教大学教養学部
University of California, San Diego
Harvard Medical School博士研究員

僕がICU高校の受験を決めたのは、自由な校風と帰国生の多い国際的な環境に憧れたからでした。幼少期と中学の一時期を英国と米国で過ごしましたが、海外生活の時期と期間の関係で帰国生扱いにならなかったため、"隠れ帰国"として一般生枠でICU高校へ入学しました。友人に恵まれ、生徒以上に個性的な先生に囲まれ、のんびりとした高校生活を送らせていただきました。

入学当初より、さまざまな環境で生活してきた帰国生から世界の多様性を学びました。入学式の帰り道のバスの中で、帰国生のクラスメイトに「お前、帰国生だって色々なんだぜ。帰国生だからって、アメリカ帰りでアメリカ英語喋ると思うなよ」と怒られたのは、とても刺激的な経験でした。高校生活の日々の中で友人が話してくれるアフリカや中近東での生活の経験に、まだ見ぬ世界がたくさんある事を教えられ、ワクワクしたのを今でも覚えています。

ICU高校では、自分の好きな様に科目履修をしました。化学や物理など自然科学の教科は履修を考えたことすらなく、楽しいと思っていた教科は現代文と地理でしたので、日本の教育制度に則ると自分は"文系"だと思っていました。受験が迫って来る時期に、自分は"文系"で数学も好きだし経済学部あたりを受験するのかな、と漠然と考え始めました。しかし、経済学部を卒業した後の生活を想像した際、当時の僕には東京の満員電車で疲れ切っている会社員しかイメージできず、それを目標に受験勉強をして経済学部で学ぶ気にはなれませんでした。

何か別の事をやってみようと考えた時に真っ先に頭に浮かんだのが、1年次に履修した岩田先生の生物の授業でした。隣接する大学(ICU)キャンパスで野草を食べたり生理現象を学ぶ事がとても面白く、岩田先生が授業の初めに仰った「21世紀は生物学の時代だよ」というメッセージもとても印象に残っていました。さらに、ICUでは日英両語で文系理系に囚われず幅広く学べると知り、ICUで生物学を学ぶ事を希望するに至りました。その生物学の中でも、世界には考えや行動が異なる様々な人がいるけれども、その共通の基盤となる脳はどの様に働くのだろうとの思いから、神経科学の研究に興味を持ちました。国際機関で働く事にも憧れたものの、国や文化を超えた普遍的な生命の営みを根本から理解する事が魅力的に思えました。

大学在学中も友人や先生、交換留学の機会に恵まれ、卒業後は東京大学で研究生をさせていただき、その後カリフォルニア大学で博士号を取得する機会をいただきました。現在はハーバード医学院にて博士研究員として神経科学の研究に取り組んでいます。研究は思い通りにいかない事も多いのですが、さまざまな国から研究者が集まる国際的な環境、アイディアが浮かぶ創造的な瞬間、自分の考えを実験を通して実証できる喜び、世界で誰も知らない事を見つけられるかも知れないという興奮、そして研究結果が世界の役に立つかも知れないという可能性に導かれ、日々研究生活を送っています。現在の僕の根底にあるのは、ICU高校での友人との出会い、生物学との出会い、文系理系に縛られない進路選択の可能性だと思います。自分の仕事の根底が今まで歩んできた道と興味に支えられているのは大変幸せな事だと思います。ICU高校での出会いに深く感謝し、将来のICU高校生の生活を心から応援しています。

(2018年)

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南カリフォルニア在住のICU高校卒業生とともに

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