Graduates' Voice

卒業生からのメッセージ

Message 15
諸江 美緒

諸江 美緒

26期
University of Southern California
Director of Production/Associate Producer, Bang Zoom! Entertainment

中学二年生の時に頭によぎった漠然とした夢を、叶えるための第一歩がICU高校への入学だったように思います。アメリカに行って、映画を作りたい、テレビを作りたい。当時日本の中学校にいた私には果てしのない目標でした。

いわゆる「一般生」という形で受験をし、入学をした後は、驚きの連続でした。入学初日から、英語だけではないありとあらゆる外国語を自由に操る高校一年生がたくさんいることに衝撃を受け、隣や後ろの席の同級生が憧れの対象となった日を鮮明に覚えています。

不安がなかったといえば、嘘になります。得意だった英語への自信を打ち砕かれそうになり、劣等感も感じました。そんな時、新しい視点を与えてくれたのは、憧れの対象でもあった友人達でした。海外での生活を経験している彼らは、私が「あたりまえ」と思うことを、素直にすごいと褒めてくれました。単純な古文の知識や、日本史のうんちく、東京での遊び方。同年代の友人に素直に頼られるという感覚は新鮮なものでした。

そこから勉強方法や生活がガラリと変わりました。自分ができないものは全面的に頼る。友達に教えてもらう。できないことを恥ずかしいとは思わない。その代わり、できるところは責任持って自分が教える。持ちつ持たれつの体現です。

ICU高校で、勉強が 苦痛だと思ったことは一度もありません。大変な試験も、友達と勉強をすれば行事の一環でした。試験勉強の時期は特に、毎日大笑いしていた記憶があります。高校生の笑いのネタにされてしまった歴史上の偉人たちには申し訳ないですが、おかげで知識が、楽しい思い出になって脳裏に染み付いています。

授業自体も、目からウロコの授業ばかり。癖のある数学、教科書のない英語、壮大な大河ドラマのような歴史。今思うと、どの授業も大学レベルの授業を高校用に紐解いたようなそんな授業でした。純粋に、知的欲求を駆り立てられ、勉強をしているというよりは、単純に「知りたい」と思う機会を与えられた、というのが正しい表現かもしれません。特に倫理の授業で、チームで行った「ゲーム倫理」に関するリサーチとプレゼンは、十五年以上経った今なお、仕事で参考にしています。

進学時、とりあえず日本の大学を受験して、機会があれば大学院でアメリカへなんて、漠然と考えていた私に、米国大学受験の後押しをしてくれたのはアメリカ帰国のサッカー部の仲間でした。彼女に根拠があったかどうかは知りませんが、絶対できるからやってみろと言われたことは、私の自信になりました。みんなが受験勉強に励む時期、一人で行うSATの勉強は孤独ではありましたが、勉強の仕方に関してはICU高校で培った技術に自信があったので、独学で進めました。今思うと、余計な情報に左右されることがなかったので、よかったかもしれません。

結果として、現在私は、米国大学を無事卒業後、映画やテレビ制作に携わる仕事をしています。中学生の自分が聞いたら驚くような毎日だと思います。たった三年間で、東京の中学生が海外に飛び出す決断ができるところまで辿りつけたこと。客観的に見ても、なんて有意義な三年だったんだろうと思います。言語力だけではなく、知識を増やすための好奇心、学問を追求する技術、環境に適応するための勇気、そして挑戦に結果が伴うことを知ることができた経験値、全てがICU高校で過ごした三年間で培われたものだと思っています。

夢や目標があるならば、もちろん、漠然とした理想があるならば、叶えるための第一歩を応援してくれる環境です。何が好きだかわからなくて、勉強もさほど好きではないなと思うなら、学ぶ楽しさを探してください。先生や、友人や、環境が、自分の知らなかった自分を教えてくれるかもしれません。

(2019年)

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米国Emmy賞授賞式会場にて同僚と

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